2017年04月24日

鞄づくりの基本A〜腕ミシン『TE-5&TE-6』【上糸編】

第2回目の“鞄づくりの基本”は革用ミシンを取り上げたいと思います。
※第1回目“革の裁断編”はブログ右側カテゴリーの『鞄づくりの基本』からご参照ください。

当教室へ通い始められる方の8〜9割の方が、
“ミシンは小学校の家庭科以来、触っていないんですけど・・・”

といった感じです。

日ごろ家庭でミシンを扱っている、という主婦層の方々は比較的早く慣れますが、そうでない方が最初に苦戦を強いられるところがこのミシンの扱いのようです。

ということで、ここから数回に分けてミシンのセッティングの仕方(上糸・下糸の正しい通し方)、実際縫う時の注意点等を写真を使ってご説明していきたいと思います。
長くなりますので、今回は【上糸編】ということで進めていきます。

当教室で、かばん用のミシン(腕ミシン)としておいてあるのが、

腕ミシン上糸編@.jpg

こちらの『TE−6B』(窓に向かって一番左端の腕ミシン)

腕ミシン上糸編A.jpg

そして、TE−6のひとつ前の(古い)バージョンとである、

腕ミシン上糸編B.jpg

こちら『TE−5』の2台です。(窓に向かって右端の腕ミシン)

腕ミシン上糸編C.jpg

『かばん用』と書きましたが、別に鞄専用ということではありません。
縫物(主に革)の厚みが、2.5oを超える場合は、主にこちらの“腕ミシン”で縫っていただいてます。
ですので、靴でも『ワークブーツ』等通常よりも厚みのある革や帆布の場合はこちらの方が送りが強く扱いやすいので、こちらで縫うことをお勧めしている、ということです。
※2.5o以下の革・布等の場合は(主に靴やバッグの内装等)、PW−6とLPW−6という、いわゆる“ポストミシン”も2台ありますので、こちらを使っていただいてます。詳しくは“靴づくり、ときどきブログ”で掲載。

あと上の2台の違いですが、TE−6Bの方は“足踏み式”となっており(つまりモーター式ではなく足で“キーコキーコ”と踏みながら進める昔ながらのミシンです。)、TE−5の方はモーター式(クラッチモーター)となっております。

後者(TE−5)の“クラッチモーター”についてはスピードの調節がやや難しいということもあり、家庭用のミシン等の扱いに慣れている方は、こちらの方が使いやすい、という方もいますが、前者(TE−6B)の方が比較的ゆっくりと“運針”できるので、ミシンに慣れていない方はこちらからの方が馴染みやすいと思います。
あとは写真にもあります通り、返し縫いがレバーひとつで簡単なのもTE−6Bの方ですので、初心者の方は殆どがこちらからスタートしている状況です。

尚、上糸のセッティングについては、2台ともほぼ同じですので、TE−6Bの写真で説明していきます。

まず、“糸置き”に糸を置きます。

腕ミシン上糸編D.jpg

このミシンで扱う糸の太さは主に#20と#8がメインとなります。ごく稀に#5も使います。

腕ミシン上糸編E.jpg

糸が自然に出てくるように、まずはこの写真のように糸置き真上の針金に糸を引っ掛けます。
※1回だけですとたまに外れたりするので針金に2周させた方が安定します。@

更にミシン本体の上に立っている“アンテナ”部分にこのように通します。(基本右から左、上から下へです。)A

腕ミシン上糸編F.jpg

そしてミシン左側に向かって糸を引き、写真のように糸を通します。
尚6Bの方には予備の上糸調節つまみBが付いています。※太い糸(#5)を使うときは本来の上糸調節だけでは弱いので、ダブルで糸に張力(テンション)を掛けられるようついています。今回はここは通っていません。

腕ミシン上糸編G.jpg

こちらはミシン本体の左側面から見た写真です。
やはり、赤い矢印のように糸を通していきますが、ここが重要なポイントです。
家庭用等、どのミシンもそうですが、糸には必ずある程度の“テンション(張力)”を掛ける必要があります。
そのテンションを掛けるのがこの部分です。C

腕ミシン上糸編H.jpg

こちらが更に詳しい写真。

2枚の銀色の皿のようなものが重なり合っていて、その間に糸をしっかりと食い込ませます。皿の手前には“渦巻バネ”が付いており、手前のネジを回すことによって“テンション”を調節する、という仕組みです。

しっかりと糸をかませたら、アームの上に糸を引っ掛け、その後“糸とりバネ”と呼ばれる部分に糸を掛けます。

その後は“天秤”(ペダルを踏むと上下に動くアーム)に糸を掛け・・、※スミマセン、写真上部で見切れています・・・。

腕ミシン上糸編I.jpg

最後に“針棒糸掛け”に通して、上糸のセッティングは終了となります。

最近のコンピューター等が内蔵されている家庭用ミシンは、
“ここに糸を置いて、ここに引っ掛けるだけで誰でもすぐに使えますっ!”

なんていうものが多い中、やはり工業用でしかも革用のミシンですので多少複雑ではありますが、数回で慣れると思います。
ただ、どうしても皆さん“縫う”ということに専念しすぎて、最も需要なセッティングを軽視している傾向があるので、ここで詳しく書かせていただきました。
※初心者の方は教室での練習後に、またある程度慣れた方でも他の作業でミシンの扱いがしばらくぶり、といった方も、教室以外の場所で復習がてらザッと読んでいただければ、と思います。

正直、ステッチが綺麗か綺麗ではないか、というのは、上手い人もそうでない人も殆ど差はないと思います。
それよりも、正しくセッティングできているかどうかが、大きな失敗を防ぐ最大の方法だと思いますので、是非ご参考にしていただければ幸いです。


posted by tomo at 09:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 鞄づくりの基本

2017年04月19日

お財布パンパン問題

お母さまからお財布のカスタマイズを依頼されたKさん・・・。

Kさん財布修理A.jpg

爬虫類系の革を使った、なかなか上物のお財布のようです。

Kさん財布修理@.jpg

内装は合皮等を使うものが多い中、ちゃんとした牛革が使われており、10年近く使っている割には状態は決して悪くないのですが・・・。

お母さま曰く・・、
“中にカードとかいっぱい入れるとパンパンになって、ファスナーが開いてきちゃうの・・・”

・・・・そ、それは単にこの財布が持つ本来のキャパシティを超えているだけなのでは・・・

とも思いましたが、せっかく革小物の経験値を積んだ娘が

“任せなさいっ!”

と持ち込んできたので、そこは敢えて目を瞑り、早速解体作業へ・・・。

Kさん財布修理B.jpg

あ〜ぁ、バラバラ〜・・・。もう後戻りできませんよ・・。

Kさん財布修理C.jpg

片面の爬虫類革の方は状態もよく、またこの財布の売りでもあるのでそのまま再利用しますが、もう片面の牛革の方はやや劣化が進んでいたので、こちらは“タンニン鞣し”の高級皮革を使うことに・・。

Kさん財布修理D.jpg

また問題のファスナーですが、コイル式(樹脂製)だったので、ここは金属製で壊れにくいものに替えることに・・・。
これでファスナーが開いてしまうことはなくなるとは思うのですが・・。(まあ、それでも本来のキャパ内でお使いいただくのがベストなのですが・・。)

Kさん財布修理E.jpg

内装や心材も殆ど劣化がないので(心材の一部劣化しているところだけ新しいものを入れて)、ほぼそのまま再利用していきます。

Kさん財布修理F.jpg

最も難易度の高い、観音開きになるファスナー付け作業へ・・。

Kさん財布修理G.jpg

ミシンもドキドキです。
基本、既に空いているミシン穴に針を落としていかないといけないので、ここは結構プロでも難しい作業なんです。

で、なんとか完成〜!

336_2.jpg

モスグリーンのタンニン革を使ったことで、だいぶ印象が変わりましたね。

336_4.jpg

外付けのポケット部分も同様に金属製のファスナーに替えましたので、これでパンパンに入っても壊れにくくなったとは思いますが・・・。

まあ、それでも中に入れるのはほどほどにお願いします。
posted by tomo at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 教室・工房

2017年04月04日

ダンディSさん追っかけ記録A(カメラケース編)〜たまには“駒合わせ縫い”はいかが?の巻

前回に引き続き、Sさんカメラケース・・。

SさんカメラケースE.jpg

カメラ本体を支える部分です。

SさんカメラケースF.jpg

これまでと違うところは底面と側面のステッチ・・・。
一見同じような感じですが、ここだけは『駒合わせ縫い』という方法で縫ってます。

一般的な『平縫い』といわれるステッチは縫い目の数を合わせる必要があります。

平縫い.jpg

分かりにくいので上の図で説明すると、側面の革と底面の革の穴の数はそれぞれ8つです。
ところが側面革(外)と底面革(内)では、外径と内径で差が生じますがそのズレを解消するために、カーブの部分では内側の穴のピッチを小さく(3〜4o)しています。

ところが『駒合わせ縫い』は縫い目の数は無視して縫い合わせる方法です。

駒合わせ縫い.jpg

側面(外側)の革の穴が8つに対して、底面(内側)の穴は7つ・・・、一つ少ないです。
基本的にステッチは穴が対になっていなければならないのですが、今回のようにカーブが急だったりする場合はこのように角の部分で帳尻を合わせるように縫い進めていきます。

分かるかな・・・?

ということで、本体ケース部分も完成〜!

SさんカメラケースM.jpg

で、こちらは“コンチョ式”のジャンパホック・・。

SさんカメラケースP.jpg

いい感じで取り付けて・・・、

SさんカメラケースQ.jpg

ストラップ部分だけは時間短縮の為、ミシンでダッダッダッ〜と・・。

SさんカメラケースR.jpg

で最後に染色をして・・、

SさんカメラケースS.jpg

完成〜!

333_1.jpg


こちらはカバー部分・・。

333_2.jpg

で、本体&ストラップ・・・。

333_5.jpg

333_4.jpg

333_7.jpg

これからのお花見&行楽シーズンに大活躍してくれそうですな・・。